2023年5月30日

日本地球惑星科学連合セッション開催報告

投稿者: space

日本地球惑星科学連合(JpGU)およびアメリカ地理学連合(AGU)共催の共同セッション「陸域海洋相互作用ー惑星スケールの物質輸送」(山敷庸亮(京都大学)、Behera Swadhin (JAMSTEC)、佐々木貴教(京都大学)升本幸夫(東京大学))が、2023年5月24日、幕張メッセにて開催された。本セッションは日本海洋学会と水文水資源学会の共催として「有人宇宙学-宇宙移住のための三つのコアコンセプト」を掲げた二度目の国際学術セッションです。

まずアメリカからSIC特任教授のVladimir Airapetian氏(NASA/GSFC)が、「 Magnetic Lives of Young Solar-Like Stars and The Impact of Exoplanets」と題して、スーパーフレアが高頻度で発生する若い太陽型星の状況がどのように実際の太陽型星に影響を及ぼすかについて発表があった。次に山敷 庸亮氏が「惑星移住に関する三つの「核心」コンセプト-コアバイオーム、コアテクノロジー、コアソサエティ」について、宇宙移住との関連にて解説を行なった。続いて、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の桜井 誠人氏が、有人宇宙探査のための物理化学的生命維持装置[ECLSS]についての解説を行なった。続いて、京都大学の市村周一氏が「ANALYSIS OF THE LIFE SUPPORT SYSTEM AND QUALITY OF LIFE ELEMENTS OF THE CURRENT HUMAN SPACE EXPLORATION」と題して、宇宙空間の物資輸送について、特にQOLのリサイクルの現状を解析した発表を行なった。前半最後には、JAXAの吉川真氏が、「地球-月圏および火星における太陽系小天体の衝突リスク」と題して、地球に比べて特に火星は軌道を交差し、かつ接近する小惑星の数が圧倒的に多いことを示した。

後半のセッションでは、Biosphere 2のJohn Adams氏による[What we are learning from Biosphere 2 about Biosphere and beyond]についての講演があり、Biosphere2の歴史と今 後について紹介があった。次に遠藤雅人氏 (東京海洋大学)による宇宙海洋では、ティラピアを中心とした宇宙養殖の研究成果から水棲生物の星間輸送の可能性と課題について示された。次に宮澤泰正氏による「Ocean state forecasting toward the digital twin of the ocean」では、JCOPEにおける時間軸も含めた4次元データ同化を述べ、それによって黒潮の軌跡をより性格に表現時間発展的なデータを同化する技術について述べられた。

さらに、IITのRoma Varghese 氏により、「The linkage between photosynthetic CO2 assimilation rates in monsoon Asia and hydroclimate anomalies 」と題した研究発表にて地球上の地表プロセスと海洋気候を関連した発表を行なった。次にBehera Swadhin(JAMSTEC)による、「Climate link to heatwaves over Japan」では日本の熱波と遠隔地のSSTや他の項目に関するテレコネクションを総括した発表があった。最後に、山本駿(京都大学)による、「京都盆地の水理地質モデル構築と広域地下水流動・熱輸送解析」と題した地下水と熱輸送に関する発表があった。

 

その後、ポスターセッションにて、植村優香氏らは、「小惑星ベスタにおける人工的な生存圏の構築」について発表を行ない、小惑星ベスタに人工重力施設をつくって生活圏を構築する構想について述べた。次に新原有紗氏は、「How to establish Core-society in the Space」と題して、月面上での社会を構築するための問題を法的観点から述べた。また、藤井咲花氏は、「水を用いた月面構造物における宇宙放射線の遮蔽に関する研究」と題して、月面上でのさまざまな部材による放射線遮蔽数値実験について述べた。さらに三木健司氏は、「Dynamics of pollen-generating environment determined by flowering synchrony」と題して花粉環境のダイナミクスに関する研究を紹介した。セッションには、NASA/GSFCからの若手研究者や、民間宇宙飛行士の稲波氏、その他さまざまな分野の人々が参加し、活発な議論が行われ、宇宙移住のために地球の環境要素をどのように持参するかについても検討が進んだ。SIC有人宇宙学研究センターは、今年度からJpGU会場に、京都大学地球惑星科学連合として、理学研究科地球惑星科学専攻、人間環境学研究科、防災研究所、総合生存学館とともにブースを出展し、VR展示などとともに住友林業・鹿島建設・DMG森精機らとの共同研究ブースセミナーで紹介、さらにLignosatクラウドファンディングや書籍「有人宇宙学―宇宙移住の3つのコアコンセプト」を紹介するなど、大変盛況であった。(山敷庸亮 記)