鹿島建設presents 火星に住もう!SEASON3講演報告
SIC有人宇宙学研究センターとよみうりカルチャーOSAKAの連携講座「火星に住もう! Season3」(全6回)は、7月9日、第4回「たかが木材、されど木材 ~どうなる?木造人工衛星~」が、読売京都ビル(京都市中京区)で開かれ、京都大学農学研究科森林科学専攻教授の仲村匡司氏が登壇した。
オープニングでは、講演内容の「仲村教授の研究領域について」「木造人工衛星のはじまり」「木造で人工衛星を作ることのメリット」「人工衛星の開発、打ち上げ費用の問題」「LignoSatの開発スタート」「誰が木造構体を作るのか?」「フロイト・モデルの完成を目指して」の7つを順に沿って解説。実際の木造人工衛星(プロトタイプ)1号機も持参され、参加者は、初めて見る木造人工衛星を手に取って構造を確認した。
仲村教授は、「人・住・木」をキーワードとし、「木材の特性の何が居住空間の構築に使えるのか」「木材の特性の何が人の心理と生理に影響するのか」を図で説明。木材は調湿性、保温性、断熱性、遮音性、耐震性がありハードにもソフトにも使える稀有な材料であると強調。
また、京都大学、住友林業の共同研究LignoStellaプロジェクトの始動について紹介し、人工衛星に木材を使用する環境的メリットを取り上げた。近年宇宙ビジネスの加速で人工衛星の打ち上げ数が増加している。金属製人工衛星は大気圏突入時に「アルミナ粒子」という細かな金属粒子を生み出し、このまま金属人工衛星が打ち上げられると数十年以内に地球環境に悪影響を与える可能性があると警鐘を鳴らす。この問題の解決方法の一つが「木造人工衛星」である。アルミナ粒子の発生を抑制することが可能であり、「宇宙の真空でも劣化しない」「温度変化の激しい宇宙空間でも安定する」さらに「水分やバクテリアが存在しない宇宙空間では腐らない」などの特長から金属に置き換えての活用に期待されている。
2024年の木造人工衛星(LignoSat・リグノサット)の打ち上げを目指し、注目を集めていることもあり、来場受講者25人(オンライン受講10人)の関心の高さがうかがえた。
参加者からは、「木造人工衛星というのは、どのくらいまで大きいものが造れるのか」という質問があり、仲村先生は「現在のものは10㎝角ですが、大きなものを作るには、どのくらい大きな板が取れるかです。」と話す。
次回の講座は8月20日(13:00~14:30、読売京都ビル)、「宇宙居住のための人工重力施設研究」について、鹿島建設イノベーション推進室宇宙担当の大野琢也が講師を務める。
申し込みはよみうりカルチャーOSAKAのHP(https://www.ync.ne.jp/osaka/mananto/)から。
(今井文能 記)