宇宙放射線影響研究

航空機や宇宙ステーション、そして将来の宇宙探査機への銀河宇宙線や太陽粒子線の影響を評価する。

人類が宇宙に進出し、長期間の滞在を考えるためには、宇宙放射線の影響を評価しなければなりません。

我々の住む地球は、厚い大気の存在のため人体に有害な宇宙放射線はほとんど地表に届きません。例え強い太陽フレアに伴う太陽光エネルギー粒子(SEP)を受けても、地表での被ばく量はマイクロシーベルトオーダーです。ところが航空機の飛行高度であれば、それが時には数百マイクロシーベルト、またミリシーベルトオーダーに達することもあります。さらに、地球周回軌道においては、その被ばく量が半年間で500m Svに達するといわれています。

しかしながら、その地球周回軌道においても、地球磁場のために、太陽から降り注ぐ危険な陽子線の影響は直接受けずに済みます。ところが、地球から離れた月面や、そして磁場や大気がほとんどない火星表面で長期間居住することを想定すると、その累積被ばく量が500 mSv以上、時には数シーベルトと見積もられることもあります。

普段の我々の生活では全く影響のない銀河宇宙線(GCR)による被ばくにおいても、地球の地上ではほとんど無視できるレベルですが、火星では1日あたり200 uGyほど被ばくするようです。またGCRは重粒子を含むので、宇宙空間での影響は甚大です。そして、SEPが火星に到達すると、磁場がないので、直接火星表面に到達し、非常に深刻な影響をもたらします。このような危険な宇宙放射線から宇宙飛行士、そして将来宇宙に移住するであろう人類を守ってゆくために、どのような対策が必要でしょうか?

我々のグループでは、JAEAで開発されたPHITSコードにEXOKYOTO フレア予測モジュールを組み合わせ、惑星表面におけるGCRやSEPによる被ばく評価を行なっています。また、太陽フレアにともなうSEPの予測モジュールとその影響評価モジュールの開発も進めてゆく予定です。

また、我々のグループでは、太陽系外惑星への被ばく評価を世界で初めて行いました。同様のモジュールを用いて、火星をはじめとした他の太陽系惑星への影響の評価も行なっています。

生命が居住可能な系外惑星へのスーパーフレアの影響を算出 -ハビタブル惑星における宇宙線被ばくの定量化に成功-

 

Prosima Centauri bにおける恒星フレアを評価した被ばく量推定。