倉敷市内でのアウトリーチイベント
12月9日には、真備ふれあいセンターでもMASCおよび倉敷市によるアウトリーチイベントが開催されました。まず、John Mankins 副総裁より、MVAのイベントを倉敷で行えることの感謝が述べられました。Mankins先生は何回も来日されているそうですが、倉敷に訪れるのは初めてだそうで、天体望遠鏡がたくさん設立されているここ倉敷でイベントを行うことができて光栄だとおっしゃられていました。
次に、JAXAの山中先生より、JAXAが取り組んでいる月面探査計画について講演がありました。本題に入る前に、現在唯一人類が持続的に宇宙で生活を送ることができている場所、ISSについての説明がありました。ISSは様々な国の作った複数のモジュールから構成されていること、また秒速7.7kmで周回していることなどをわかりやすく説明されていました。次に、JAXAが取り組んでいる、月面着陸実証機SLIMや月極域探査機LUPEXの紹介がありました。月の南極は起伏に富み、谷には太陽当たらず氷が存在しているかもしれないこと、谷を少し上にあがると適当な温度帯があることなどを示され、月極域の重要性を強調されていました。また、月面上での交通手段としてJAXAがトヨタと共同開発中の有人与圧ローバーについての説明がありました。最後に、日本は輸送機・バッテリー・建設の技術に長けており、これらの強みを活かすことによって世界の宇宙産業(Gatewayなど)で頭角を示していくと話されていました。加えて、地球・火星間の往復実証や火星の衛星探査などを目的としたMMXの開発についても言及がありました。
続いて、Lunar Business Consortiumの内田先生より、月面での水の利活用についてお話がありました。まず、宇宙活動についての今までの道のりについて軽く説明がありました。これまで宇宙活動は政府が決めており、民間がそれを受託していましたが、現在はトヨタ、タカラトミー、日経グローバル、鹿島などの民間企業の宇宙産業への参画が著しく、特にispaceについて、政府とは完全独立で資金を集めて月面着陸に挑戦した民間企業と説明されていました。また、ispaceは完全に民間で活動しているのではなく、政府の支援のもとで行っている活動もある(スターダストプロジェクト)ことにも言及されていました。次に本題である月面での水の利活用について話されました。月に存在するかもしれない主な活用方法として、水素と酸素に電気分解をしてロケットの推進薬などへ利用することを述べられていました。また、水素と酸素に電気分解する具体的な方法ついて、レゴリスから抽出し、精製し、電気分解し、液化して貯蔵するプロセスでどこにどの施設を置くか、パイプラインはどうするのかという細かなところまでも考慮されていました。
続いて、ispaceの朝妻先生より、ispaceでの主な取り組みであるHAKUTO-Rについての説明がありました。HAKUTO-Rは高頻度かつ低コストの定期便を想定した交通手段を実現するまで複数のMissionに分割されており、Mission1は荷物を背積載した状態で月面まで荷物を運搬することを目標にしています。昨年打ち上げがあった実証機は失敗してしまいましたが、着陸の時に失敗してしまっただけで、それまでは何の問題もなく飛行しており、ほぼ成功に近かった、また近いうちに再挑戦する、と話されていました。
続いて、空飛ぶクルマを開発されたMASCの坂上先生より、空飛ぶクルマのプロモーションがありました。ここまでの講演は宇宙を舞台にするものが多かったですが、MASCの空飛ぶクルマは地上近くを飛行するものであり、「地上近く」の視点からの講演でした。現在は空飛ぶクルマ専用の道路を具体的にどこに敷くかを検討しているということです。
後半の部はJAXAの津田先生・金井宇宙飛行士による講演でした。
JAXAの津田先生による講演では、まず、リュウグウについての導入がありました。リュウグウは炭素が多い小惑星であり、メディアでよく見られる画像よりも本来はもっと黒く見えることや、凹凸の激しい小惑星であると話されていました。
次に、はやぶさ2の成功までの過程についてです。予想よりも凹凸があることがわかったため、できるだけ平らなところに正確に着陸しなければならなくなったことを話されていました。本来、目標着陸地点±100m以内に着陸すれば良いところが、凹凸のため目標着陸地点±3m以内に着陸しなければならなくなったそうです。結果はたった60cmの誤差となり、これは世界に誇るべき精緻な操作技術だとおっしゃっていました。また、リュウグウの表面は100℃くらいと熱いため、タッチダウンは一瞬でその瞬間に弾丸を出して穴を開け、リュウグウの地下物質を採取したとおっしゃっていました。小惑星の地下物質は表面の物質と異なり日焼けしていないため、何億年前もの情報を保存しており、非常に重要だとおっしゃっていました。
金井宇宙飛行士は宇宙服姿で登壇され、宇宙飛行士になったきっかけや宇宙飛行士にどんな職業の人がいるのかなど、宇宙飛行士の実際を詳しくお話しされました。ISSの窓をのぞけば大きな青い地球が見えて、地球がとても頼もしく見えた、だから宇宙にいても寂しくないんだとおっしゃっていたのが印象的でした。