低圧下樹木育成プロジェクト紹介
令和5年度に新たに加わった学生メンバー7名に対して、ポプラの育成実験を行うに際しての基礎知識を習得するための勉強会(ゼミ)を3回(0622, 0628, 0720)実施しました。
1. 植物生理生態学入門
キーワード:生物学における植物生理生態学の位置付け、生態学とは、構造(かたち)と機能、資源獲得の方法、環境適応能力、コストとベネフィット、トレードオフ、馴(順)化の幅、ストレス抵抗性(ストレス回避とストレス耐性)
課題:地球の環境とはかなり異なる火星の環境で、それら環境要因は樹木の成長にとってストレスとなるのでしょうか?
2. 光合成
キーワード:植物と地球の歴史、葉の構造、葉緑体の構造、チラコイド反応とストロマ反応、電子伝達系、カルビン・ベンソン回路、光呼吸、過剰エネルギー対策(活性酸素と光阻害の抑制、クロロフィル蛍光)、C3植物、C4植物、CAM植物
課題:低酸素環境が継続的に光呼吸をどの程度抑制するのでしょうか?
3. 植物の水分生理
キーワード:植物にとっての水、SPAC内の水移動、水分状態の判定、水ポテンシャル(Ψw =Ψs + Ψp)の概念、脱水、原形質分離、細胞の圧ポテンシャル、乾燥適応、浸透調節、細胞壁体積弾性率、水ポテンシャル落差による水の樹体内の移動、キャビテーションとエンボリズム、樹高の限界(セコイアメスギ)
課題:低圧、低重力による樹木の種々物理因子の変化
樹木育成チーム新メンバーの原口朝妃と申します。現在はチームの先輩方に教わりながら、観察記録等に取り組んでいます。今回の新メンバー向けゼミでは、観察記録中だけでは知りえない、ポプラ育成実験に関する様々な基礎知識を学びました。まず、育成チームが取り組んでいる研究は、植物生理生態学に相当することを知り、植物生理生態学がどのようなアプローチで何を解明するのか、そして何に役に立つのかについて知りました。これをポプラ育成実験に当てはめると、樹高や葉の状態の観察記録から、低圧環境が樹木の成長へ与えるストレスの度合いを解明し、将来の月や火星における、よりコストの低い植物育成方法の開発に役立つ、とすることができ、取り組んでいる実験の重要性を実感することができました。第2回では光合成、第3回では植物の水分についてと、実験試料のポプラだけでなく、広く植物について教わりました。ゼミを受ける前よりも、研究の意義や、観察記録項目それぞれの意味などを理解することができました。学んだことを頭に入れながら、今後の樹木育成チームの活動に取り組んでいきたいです。
(原口朝妃・池田武文記)